スノーサイクルフェスタへの参加の前日、1月20日に美瑛に入り自転車で旅行しました。そこでの経験から非常に感銘を受けたので記事にしておきたいと思います。
冬の美瑛、輪行旅行
もさもさ降るなか札幌駅へ
早朝6時前、社宅を出ようとすると雪がもさもさと降っていました。急いで札幌駅に向かい、自転車を折りたたみましたが、ブロンプトンだったとしても間に合わないくらいに余裕がありませんでした。
乗る予定のライラック1号は6時29分発で無事に乗り遅れてしまいました。
みどりの窓口で確認したところ、えきねっと予約の乗車券・特急券でも「乗車券」については後続のオホーツクでも使えるとのことで、別途、自由席特急券を購入して乗車しました。
実はこれ結構すごいことで、乗り遅れたとしても駅で乗車券と特急券を買うより安くなるのですね。
スーツケースと同じ大きさになるパラトルーパーと快適輪行
パラトルーパーを購入したきっかけは、冬でも快適に輪行をしたいという欲望があったからです。ファットバイクは確かに雪道を走るうえでは最適解ですが、大きすぎて輪行が非常に困難で、毎回「二度とやりたくない」気持ちになりながら電車に乗せていました。
また、20インチ以下のホイールサイズの折り畳み自転車では、雪道での走行の性能があまりに限界があると考えていたからです。
パラトルーパーは折りたたむと、機内持ち込みできない中サイズスーツケースとほぼ同じ大きさになります。つまりほとんどの電車、特急や新幹線においてどこかしらに置くことができるサイズということになります。
このおかげで、荷物置き場に置くことができ、列車での移動も快適に楽しむことができました。
冬晴れの美瑛を征く
旭川駅で富良野線に乗り換え、9時16分、美瑛駅に到着しました。自転車の重さ自体はファットバイクとさほど変わらないはずですが、大きさが小さいだけで駅の中や列車の中での移動は非常に楽でした。
札幌は雪でしたが、北に向かうと珍しい冬ばれで、青空が広がっていました。自転車を組み立て、とりあえず、市街地から有名な観光地の「青い池」方面に向かうことにしました。
美瑛神社参拝
気温は氷点下20度程、これは年末年始の宗谷岬より低い気温です。純粋な寒さが頬に突き刺さりながらも、市街地を東に抜けていきます。
昨年来た時にも気になっていた美瑛神社に立ち寄ることにしました。
朱色の門構えに木造の社という本州の神社と同じ様式を取り入れていることに驚きました。北海道は雪が多いので、石造りやコンクリートの神社が多いのです。また、ガラス戸で四周を囲っている場所も多い中で、いかにもな神社があるので感動していました。
この旅の安全を祈念し、神社を後にしました。
噴煙あがる十勝岳に導かれる
神社の鳥居から出るときに、遠くに山が見えました。駅からも見えていましたが、青空に伸びる白い頂の先に、どうも噴煙が上がっているように見えます。
__十勝岳
その山は昨年に上富良野の方から見上げて美しいと感じていた山でした。
__あの山の近くに行ってみたい
私は引き寄せられるように山への道を走り始めました。
白い青い池
美瑛というと富良野と並んでラベンダーが有名です。最近でこそ話題になる過密観光_オーバーツーリズム_が問題になるくらいにきっと道路も混みあっているのだろう、と思って自転車で走り出しましたが、10時を過ぎても自動車の数が一向に増える気配はありません。
15分に1回くらい車が何台か追い抜いていくだけという交通量で、非常に快適に自転車に乗ることができました。
目指すは十勝岳の登山口の一つ、白金温泉ですが、その手前にもいくつかの有名な場所があります。
青い池は観光名所の一つですが、凍った水面に雪が積もってしまい完全に雪に覆われていました。まあこれはこれでという雰囲気のある場所でした。実際、大陸からの観光客は大型バスで大量に押し寄せ、楽しそうに風景を楽しんでいました。
毎年この時期にしか美瑛に着ていないので、雪のないシーズンにまた再訪したいと感じました。
青い池の駐車場は有料とのことで料金を支払おうとゲートに向かうと「自転車は無料だよ」とのことでした。夏は自転車も有料らしいのですが、冬は自転車で来る人は皆無らしく、非常に驚いて好意的にお話してもらえました。
道の駅びえい白金ビルケで昼食
青い池から少し上ったところに道の駅びえい白金ビルケがあります。ここでお昼ごはんにすることにしました。
道中にも何件か飲食店は存在したのですが、半分くらいは冬期休業らしく、結局道の駅まで上ってくることになりました。
道の駅のBETWEEN THE BREADさんのBTBバーガーとポテトを頂きました。
美瑛産の小麦や牛肉を使ったハンバーガです。それ以外も北海道産の食材です。ボリュームがあってよかったです。
地場産の食材をふんだんに使える北海道は本当に良いところだと感じます。
絶景の白髭の滝、白金温泉へ
美瑛駅から20㎞弱、十勝岳が大きく見える温泉地、白金温泉に到着しました。
美瑛川にかかる橋からは温泉街と十勝岳・美瑛富士を写真に収めることができました。雪を纏った山々は「そこに神がいる」と感じさせるものでした。
橋の下には白髭の滝があります。伸びるつららが確かにひげのようです。
写真で見てもらうとわかる通り、温泉が流れ込んだ川の水が青色に変化しています。この青が下流の青い池の原因となっています。温泉に含まれる成分が色を変化させているのです。
眠る大地に息吹く動物たち
雪の降る地域の冬は、一面が白に覆われてしまいますから、まるですべてが眠りにつき、場合によってはすべてが死に絶えてしまったかのように感じるときもままあります。
しかしながら、冬でも活動を続ける動物たちがいます。
雪原を駆けるキタキツネやゆきうさぎ、林ではエゾリスが蓄えていた木の実を掘り返して食べています。
自転車の足を止めると、木をトントンと叩く音が聴こえてきます。キツツキの類、エゾアカゲラなどが木の中に潜む虫を食べようとしているのです。
厳しい環境だからこそ、生きている動物たちの力強さを感じられると私は考えています。
自転車案内人が私以外にも必要だ
冬の北海道を自転車で走る体験を共有する難しさ
私はこの職業に就いて、自動車の運転よりも自転車に乗る時間が増え、ありとあらゆることを自転車でこなし、北海道で雪道走行の経験も積み、年越し宗谷岬も無事に完遂しました。
これだけの経験があるからこそ、北海道のどのエリアでも自転車を運行して観光できるという自信があります。
そして冬だからこその醍醐味があり、他の人と共有したいと考えるようになりました。
しかし、これが自転車にあまり乗ったことのない観光客が同じことをでき、経験できるのかというと難しいと言わざるを得ません。
自転車にある程度乗り慣れていないと、楽しむ前につらいのです。
着こむだけの寒さ対策では、汗を多少かく自転車では逆に冷えてしまうのです。
体力・経験の差を埋める可能性があるのはe-bikeですが、バッテリーの消耗は氷点下では驚く程早く、管理には知識と経験が必要です。
各地に「自転車案内人」を増やしていきたい
「自転車案内人」とは、私が肩書として定義し始めた言葉です。
「自転車を日常的に活用し、ノウハウを蓄え、教えることのできる人」と最初に定義していました。
このように輪行で冬の北海道を旅行してみると、更に付け加える必要があるように感じました。
「その地域の交通、観光、拠点、その他事情に精通し、他の人を安全な方向に導ける」ということを加えたいと考えました。
上記したとおり、私にはノウハウがあるので自分一人ならば安全に旅行することができます。しかし、他の人が加わったとき、地域に未習熟な私が案内人ではリスクが高まるのです。
できることならそれぞれの地域に特化した「自転車案内人」がいたほうが良いのです。私のような、他の地域の自転車案内人が遊びに来て一緒に走るときにも助けになるからです。
この旅は、私のライフワークが見えたような旅路となりました。
「全国各地で自転車案内人の考え方を広め、案内人を増やしていく」
このことを目標として、これからも転がって転がして参ります。
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