憧れの豊富温泉だけど〜年越し宗谷2023 Day5

ファットバイク

宴のあと

 2023年12月30日_日付が変わるまで宴は続きました。

 自転車サークルや私は、明日も移動しないとならないので床に入りました。

 完全に静かになったのは午前2時前だったと思います。

 宿泊施設にあるまじき状態ですが、楽しかったのでOKです。

北大ピアノサークルを見送る

 一番早く動き出したのは、一番遅くまで起きていたピアノサークルの面々でした。

「年越しの料理作るために稚内の市場に行かないと」

と、始発に間に合わせようと起き始めました。

 睡眠時間は推定3時間ほど、これが若さか。

 6時過ぎにいそいそとウタラを出ていくので私は見送りに行きました。

名大自転車サークルを見送る

 次に動き出したのは名大自転車サークルの3人でした。

「今日は稚内港の防波堤ドームで野宿なんです」

 概ね70kmの距離ですが、彼らも睡眠時間3時間ほどです。

 見ればフロントフォークに両手鍋が括りつけられています。

「宗谷岬で鍋やるんですよ」

 彼らは笑いながら出発していきました。

除雪車が動く中、自転車も征く

ゲストハウスオーナーを迎える

 見送りが完了した頃、ゲストハウスオーナーの阿部さんが帰ってきました。

 道北の駅の除雪の期間バイトも行っており、稚内からの始発列車で問寒別に帰ってきたのでした。

 まだ20代半ばほどの青年がどうして問寒別に移住したのか_

 この宿の存在を知ったときから感じていた疑問が明らかになっていきます。

「千葉で生まれて高校生になり、通学して満員電車に乗っているときから”この生活が一生続くのか?”と疑問に思っていました」

「地方のローカル線の、何もないような駅で降りるおばちゃんに、なりたかったんです」

 そう語る彼の素直さというかはこの時代に貴重だと感じました。

「ヒモの才能があるんですよ」

 そう後に語ったのは一緒に除雪バイトから帰ってきた、千葉時代からの友人でした。

「お客さんが直してくれたり、手伝ってくれたりするからこの宿も成り立ってます」

「阿部ちゃんの人柄がなければ、こうはなってないです」

 人口は決して多くない集落だからこそ、人々は思いやりが一層に強まるのだろうと感じました。

今日は豊富温泉まで

 10時頃に私はウタラといかんを出ました。

 目的地が25kmほど先の豊富温泉だったこともあり、かなりゆっくりとした出発です。

糠南駅でラッセルを見た

 まずは糠南駅に立ち寄ることにしました。

 糠南駅は問寒別の隣の駅で、仮乗降場のホームと物置部屋の待合室の佇まいが人気の秘境駅です。

 2014年にインターネット掲示板での盛り上がりからクリスマスパーティを開催する男性らが現れ、現在でも「糠南クリパ」と称され、毎年多くの人が集まる聖地でもあります。

 糠南駅に近づくとディーゼルエンジンの音がしました。踏切の警報機も鳴り始めます。

 この時間に汽車はいないはずだがと駅につながる道路に入ると、ちょうどラッセル車が通過していくところでした。

問寒別の隣の駅、糠南。秘境駅として知られる

前日が楽しくはしゃぎすぎた

 期せずして宗谷ラッセルを見送った後、再び問寒別集落を経由して、雄信内駅を見てから幌延に向かいました。

 10月に宿泊した雄信内駅には除雪作業員の人が泊まり込みで待機していました。

 試走のときと同じ道のりを、白く変わってしまった風景の中を走っていきますが、どうも力が出ません。

 明らかに睡眠不足です。静かにちらつく雪景色の美しさと裏腹に、上がらないスピードでゆっくりと走り続けました。

廃駅跡は除雪されてなかった

 途中、秋にも訪れた安牛駅の跡地にもよりたかったのですが、集落が消えて久しい駅前道路は全く除雪されておらず、遠くから眺めるだけになりました。

 問寒別から幌延へ抜ける道は道道256号です。

 10kmほど西を走る国道40号に比べると細く、線形も悪いため、両市街に用事のある車しか通りません。

 自転車にとってはカーブはアクセントになり、非常に走りやすい道です。

 しばらく走ると「北緯45度」の標識が見えてきました。思わず声を上げてグローブと一緒に写真を撮ります。

 45NRTHは北米のサイクルブランドで、主に寒冷地向けの商品を開発しています。

 自転車の操作を妨げない防寒手袋、SPDにも対応する防寒ブーツを、今回私は装着しています。 

 社名の由来はまさに「北緯45度」ですから、まさに北海道の自転車乗りのための装備と言っても過言ではありません。

道道256号 北緯45度を越える!

幌延駅で昼食

 その後も牛歩に進み続け、中間地点の幌延市街に到着しました。

 せっかくなのでお店でご飯でも食べようかと思い、噂に聴いていた「あいづ食堂」さんを訪ねました。

 しかしあいにくの休業日で、近くのスーパーで補給をして豊富温泉へ向かいます。

あいづ食堂はおやすみ!

トナカイを初めて見る

 幌延市街から豊富温泉へは丘陵地帯を越えていきます。長いアップダウンを繰り返していると開けた場所に出ました。

 確かトナカイの観光牧場が会ったはず_

 そう思っていると看板が見えたので、少し立ち寄ることにしました。

 しかしこちらも年末年始休業とのことで、ショップも空いておらず、道路から遠巻きにトナカイが群れているのを見るだけでした。

 鹿とは違った角が生えているのが印象的でした。

秋に見たスイカのような牧草ロールは雪原に放置されていた

徒歩の人もいるらしい…

 その後も下り基調で丘陵地形は続き、日が沈む頃に豊富温泉に到着しました。

 受付をしていると「数日前に徒歩で宗谷に向かう人を泊めた」と聞き驚いていました。そして、どうも前日のウタラにも宿泊していた人と同一人物らしいとも分かりました。

 自転車ですら結構大変なのに、徒歩とはどんな感じな人なのだろう_

 その人と会うのは数カ月先になることをその時の私は知りませんでした。

宿に到着した様子

気がつけば21時

 宿について荷解きをし、濡れた装備を乾かし終えると、急激に眠気が襲ってきました。

 ウタラでの大宴会、そして30km弱のライドが確実に疲労になっていました。

 気がつけばベッドの上で着の身着のまま突っ伏していました。

 時計は20時半を回っています。

 ここに宿をとったのは有名な豊富温泉に入るためでした。

 しかし、ふれあいセンターの受付時間ギリギリになってしまい諦めざるを得ない状況でした。

 少し仮眠して湧いてきた最後の力を振り絞り、シャワーを浴びて床に本格的に入り一日を終えました。

 また来年来れば良い_

 落ち行く意識の中で明日とその先への願いを重ねました。

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