自転車に救われた人生

自転車

 少し昔の話をしよう。

 私は2015年から現在の職業に就いたが、非常に拘束される部分の多い職場だった。

 配属されたのは群馬の山のふもと、最寄駅からは7㎞の斜面を300mほど上る。前橋も高崎も20㎞程離れていた。バスは年々本数が減る一方だったので、自動車を持つ人が圧倒的に多い環境でもあるにもかかわらず、自動車を持つことが許されなかった。

 私に関しては学生時代から保有している自動車があったが、運転は許可されず新潟の実家に昨年までおかれている有様だった。私が外出するときは、片道600円のバスを使うか3000円のタクシーを使うほかなかった。

 その状況が変わったのは2017年である。一緒に群馬に赴任した同期が任用期間を終えて辞職することになり、彼の折り畳み自転車を1台を譲り受けることになったのだ。

 市場価格3万円、イオンで売っている折り畳み自転車だった。

 重さは14㎏あった。最初は、自転車でこの坂を上るのは無理だろう、そういう先入観があった。

初めて買った折り畳み自転車、DAHON Dash P8。 敢えて折り畳みに見えない自転車を選んだ。

 しかしそこで一度実験してみようという気持ちになぜかなった。坂道を信じられない勢いで降りると、バスよりも早く到着できた。

 買い物を済ませて、今度は坂道を登っていく。だんだんと坂道はつらくなるが、登りきれた。これが自信になった。

 当時、電車で旅行をすることにのめり込んでいた。仕事で熊本県に赴いて、長距離移動が大変だが面白い出会いがあることに気づいていた。その電車と、自転車を組み合わせられると考えた。

 公共交通機関などに自転車を積載して移動することを輪行という。そのために自転車を格納する袋、輪行袋を買いに行った。

 その後、数えきれないほど輪行で旅をした。出会う風景、街、人々が私自身の人生を彩った。

 あのころの経験があったから、今、辞職して外の世界で生きていこうと思えるのだ。

 そして感謝の気持ちをもって、自転車の良さを広げ、多くの人に普及して、私の感じた「自由」を他の人にも体験してもらいたいと考えて今行動している。

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