ママチャリ~我が国の交通政策の産物

 自転車、と一言で言われたときに皆さんはどのような姿を思い出すだろうか。ロードバイクはブームになって久しいからそれを思い出す人もいるだろう。その他、折り畳み自転車だったり、電動アシストがついていたり、細かく言うとたくさんのジャンルがあるのが自転車だ。

 その中でもこと日本において特に発達したのは、いわゆる「ママチャリ」である。

 シンプルに変速のなく、ローギヤード(低速・トルク重視)に振り切った駆動機構。

 アップライトで座るような姿勢は前方視界を良好にする。

 女性も乗りやすいようにと開発されたU字を描くような低いフレーム構造は、ユニバーサルデザインだ。

 この自転車は、個人の通学・通勤から、各地での簡易レンタルサイクル、事業用として用いられている。かつては花嫁道具の一つになった時期もあった。

 当たり前のように、どこにでも存在するこの自転車の形式が生まれた原因の一つが我が国の交通政策の結果であると私は考えている。

 今でこそ、戦後間もないころと同じように、自転車は車道を走ることが基本だと警察が始動するようになったが、1950年代以降に交通事故の増加による死者が増加するようになると、自転車の歩道走行を許可するように法改正が行われるようになった。

 ママチャリは、歩道をゆっくり走るのに適した自転車なのだ。先ほど挙げた3つの特徴は、速度が出にくいが安定して走れ、もしもの時の足つきもよいという特徴になっている。そういう点では合理的に進化した結果なのだ。

 しかし2000年代ごろから風潮が今に向かって変わり始める。自転車は車両だから車道を走るべきという方向性に警察の指導が変わり始めたのだ。

 このこと自体は悪いことではないのだが、ママチャリで車道を走ることはつらいことだと私は考えている。

 一番の理由は遅すぎるということだ。

 歩道を安全に走行するために最適に進化しているので、人間が一番気持ちいと感じるケイデンス(脚の回転数のこと)付近だと本当に10㎞/h程度しか出ないのだ。狭い道で他の交通が抜くに抜けず長大なトレインになっているのを時々見かけ、いらだった他の交通が危険な追い抜きをする場面も見たことがある。

 もちろん、法的にも、理想的にも、ママチャリが車道を走ることは間違っていないし、安心してママチャリだけでなくすべての交通が流れる状態になるべきなのだ。

 しかし現実は道は譲り合わなければならないくらい狭く、専用通行帯などほぼ皆無で、ドライバーも優しい人ばかりではない。

 速度域が低すぎ、歩道に最適化されたママチャリを車道に引きずり出すのは過酷なのではないかと考えている。

 いろいろと書いたが、もしかするとママチャリに対して悪い印象を持ってい待ったかもしれないが、それは違う。この国の素晴らしい文化は、ママチャリをはじめとしてほとんどの国民が自転車に乗れるということだ。

 海外、特にヨーロッパでは自転車に乗れる人が少ないと言われている。勿論乗る人は乗るが、日本のように大人が子供に教え、そして老人まで自転車に乗る・乗れるという文化ではないのだ。

 この文化をはぐくみ、守ってきたのは趣味のロードバイクでも競技用自転車でもない、まぎれもないママチャリなのだから。

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